ef - a tale of memories. 第12話(最終話)

第12話 「love」   coda. 「dream」    (コンテ:草川啓造、大沼心
なんだよー!千尋忘れてないじゃんかよ〜!!(泣笑)。蓮治と千尋の厳しい現実や、なかなか気持ちを切り替えられないだろう景を想定して最終回を見るのがつらかったのだけど、ふたを開けてみたら拍子抜けするくらい爽やかに終わってくれました。
蓮治は千尋のナイトになれたし景も気持ちが前に向いていたし、みやこと景も和解したみたいだし。最後、efの最も象徴的な場所の"浜辺"に集まった6人がそれぞれ自分の見つけたものを確認するように言うシーンがとても希望に満ちたもので、最終回に相応しいきれいな終わり方でした。蓮治・千尋ストーリーが自分の予想とは違いハッピーエンドになってくれてほんと嬉しかった。
あまりのつらさから諦めかけた蓮治だけど、「思いと行動が夢へとつながる」という久瀬の言葉や日記の一片に綴られた千尋の思いに突き動かされ、風に舞った日記のページを死に物ぐるいで集めて再度千尋のもとへ。千尋が泣きながら日記を綴り蓮治への思いを独白するシーンと「忘れられない」と泣く駅のシーンは切なくてこちらも涙ぼろぼろ。特に駅のシーンは細かく変わる表情と やなせなつみさん の演技、感情を大きく揺らすBGMに引き込まれて一瞬で涙があふれました。
「できない…。できないんです。13時間も蓮治君のことを考えずにいるなんて…」
千尋!」
――の部分は何回見直しても泣いてしまう。
最初、駅に来た蓮治に全てを忘れているように接した千尋は蓮治を試そうとしていたのかな。あれで蓮治が帰ってこなかったら、千尋は気持ちを捨ててこれまでのことを本当になかったことにしていたんだろう。諦めなかった蓮治の強い思いと行動が千尋への最後の壁を突破して、ふたりの夢を叶えたのだと思います。何度も繰り返し出てきた"鎖に繋がれた千尋"が蓮治の言葉によって解放された瞬間、本当にこのアニメを見て良かったと思いました。
エピローグ部分は映研部長が久しぶりに出たり、景と京介の会話を火村がこっそり聞いていたり、エプロン姿のみやこやぶーたれるミズキがかわいかったりと色々ありますが、何と言っても自分で物語を書き始める蓮治がいい。千尋という存在を他の人から忘れさせないためにも悲劇に終わった千尋の物語を救うためにも一番の選択肢だと思います。1話の蓮治の台詞はこの小説の冒頭だったわけですね。そして前を向いて走り出そうとする成長した景の姿がとてもまぶしく感じた。失恋を乗り越えた景は、強い思いを持ち続けて成就した他ヒロインとはまた別のよさがあります。ファンタジーとしてはみやこや千尋のような背景のあるヒロインが魅力的なのだと思いますが、現実的には景のような気持ちを切り替えられる強さを持つ子に自分は共感する部分が大きいです。京介にはこれからもずっと景を撮り続けてもらいたい。
OP・EDが最終回特別仕様でした。まさか日本語verの『euphoric field』が来るとは(涙)。サビの部分の映像の追加・変更を見てすごい鳥肌が…。最終回のOPだけでこんなに感動したのは初めてかもしれない。本編見たあとOPを見るとまた感動ひとしお。

総感 

大沼心さんの演出がどんなものか気になって見はじめたefですが、あの個性の強い演出がここまでマッチするとは正直見るまでは予想できませんでした。原作未プレイなので原作の雰囲気は知らないのですが、シャフトで映像化するのにほんといい題材を見つけたなとしみじみ思います。
印象的な台詞・場面も多かったです(大別すると、画面演出そのものに凝ったもの、逆に画面はシンプルで声優さんの演技を活かしたもの、の2通り)。特に強く覚えているのは以下のシーン。

  • 2話の高速フラッシュバックからEDへのつなぎ
  • みやこの着信99件
  • 浜辺での蓮治の苦悩
  • 紘と景のドア越しのやり取り
  • テレカ100度カウントダウンから紘の告白
  • 屋上で千尋が日記を捨てるところ
  • 今回千尋の呪縛が解けるシーン

伝えたいことを台詞にしないで映像で比喩的に表現している部分が多く一回見ただけでは理解しきれないシーンも多々ありましたが、そのシーンを何遍も見てキャラの心情を読み取るのがとても楽しかったです。人間関係の描写&心理描写が丁寧だったのが恋愛もののアニメとしてはとても良かったし、各話のシナリオ・構成もうまく作られていて最後まで緊張感のあるストーリーでした(シリーズ構成・脚本は全て高山カツヒコさん担当)。"悩み成長する主人公"―紘と蓮治―と"救われるヒロイン"―みやこと千尋―について12話でしっかりと描かれていたと思います。景と京介の話はこれからというところで終わってしまいましたが「続きは原作で」と爽やかに言えるようなうまい引きでした。
また、(スケジュールや予算のことは分かりませんが)凝った演出をしながらも12話全てにわたって絵の安定感が抜群だったのがすばらしかった。同時に背景美術の美しさも印象的で、efの特徴的な演出においては主役級の活躍でした。天門さんの楽曲や声優さんの演技がいいのは何度も言っているので割愛。
シナリオ、絵、音楽、声優さんの演技、演出、全てのレベルが非常に高く、minoriが今後も同じような方向性の作品を出していくのであればまたシャフトにアニメ化してもらいたいと思えるような完成度だったと思います。大沼さんすごい!

優子と火村がやっぱり気になる。ゲーム後編(『ef - the latter tale.』)出たらやりたいなー。